管理人は中学時代に同級生の一人からいじめを受け、卒業まで何度も暴力や嫌がらせを受けました。
高校生になってもいじめられた記憶がどうしても頭から離れず、何回も思い出してその度に恐怖や怒りでいっぱいになり、何事も手に付かなくなった経験があります。
管理人を救ってくれたのは、マインドフルネスでした。
今回は同様にいじめの後遺症で苦しんでいる方に向けて、辛い記憶をマインドフルネスを使って対処する方法を教えます。
いじめの辛い記憶は体験の回避でより苦痛が増してしまう
対処法を知る前に、いじめを受けた辛い記憶は「体験の回避」をすると苦痛を増幅してしまう点を知っておきましょう。体験の回避とは、自分の記憶や思考、感情などを避けようとしてしまうこと。
苦痛を増幅させてしまう理由は、記憶を抑え込む・消そうとするといった体験の回避をすると、より頻繁に辛い記憶が浮かぶようになるからです。
そして辛い記憶とともに、強い感情も何度も呼び起こされるので段々とトラウマめいたものになっていきます。
アメリカの心理学者ウェグナーが行った、シロクマの実験というものがあります。これは、シロクマの映像を3グループに見せて、①シロクマを覚えていて②シロクマを考えても考えても良い③シロクマだけ絶対に考えないという条件をそれぞれに出しました。
結果、一番シロクマの映像を覚えていたのは、絶対に考えないようにと言われた③のグループでした。シロクマのことを考えてはいけない!と思うほど、逆にシロクマのことを考えてしまう…。
同様に、いじめを受けた辛い記憶を考えないようにするほど、逆に考えてより苦しむことになります。
ちなみに、体験の回避には、テレビや音楽で紛らわせる・お酒を飲んで忘れようとする・大したことの無いように振る舞うといった、普段よく使われる方法も入ります。
そうなると、どうしたらいいのか迷いますよね…。でも、実は体験の回避を起こさずに、いじめを受けた辛い記憶を何とかする方法があります。
いじめの辛い記憶を何とかする鍵はマインドフルネス!
体験の回避がダメなら、いじめを受けた時の辛い記憶はどう対処すれば良いの…?と思いますよね。対処する鍵は、マインドフルネスを使うことです!
例えばアクセプタンス&コミットメントセラピーという心理療法がありますが、この療法でもマインドフルネスを用いて辛い記憶や思考に反応しないようにします。
マインドフルネスとは、感覚や記憶などに気づきつつも価値判断せずにあるがまま受け入れること。つまり、辛い記憶が浮かんできても、浮かんだことは気づきつつ苦痛に反応しません。
あるがまま受け入れるとありますが、これは相手を許すではなくいじめの辛い記憶が頭の片隅あっても良いと許可することです。
例え話ですが、絶対に物理的な攻撃はしてこないけど恐ろしい風貌をした怪物(いじめの辛い記憶のこと)が同じ部屋(頭の中)にいるものの、存在は認めながら反応せず(マインドフルネス)に普段通り生活する感じになります。
そんなことをしたら、ずっといじめの辛い記憶が残るのでは?と疑問に思うかもしれません。でも大丈夫。全てのものは無常(移り変わり変化していくこと)ですから、そのうち消えます。
また、マインドフルネスを繰り返していくことで、思い出しても段々と反応しないようになりますよ!
実際にマインドフルネスをやってみよう
それでは、マインドフルネスを実際にやってみましょう。ここでは、辛い記憶に対処する方法として、管理人がやってきたエクササイズの中から初心者向きで簡単なものをご紹介します。
ちなみにマインドフルネスは多少の練習が必要です。1日10分くらいでも良いので時間を決めて、2週間ほどやってみてくださいね。
最初は自分の感覚や感情に気づくことから始めよう
マインドフルネスは、まず自分の感覚や感情に気づくことから始めます。椅子や床でも良いので座って、腕を太ももの上に載せましょう。目は開けたままでよいので、自分の腕に意識を向けてください。
意識を向けつつ、手のひらを閉じたり開けたりします。別に細かい感覚に集中しなくても良いので、ただ手を開けた・閉じたことに気づいてください。
何となく分かってきたら、次は気づきを持って歩いてみましょう。普段よりもゆっくりと歩き、右足・左足の動きに気づきます。
慣れてきたら、今度は足だけでなく手や体の状態にも意識を向けてみてください。さらに上達したら、体の感覚だけでなく周囲にも気づきを向けるようにします。
なお、やっている途中に全然関係ないことを考えていることに気づくかもしれません。その場合は、気付いたら今やっていることに意識を戻してください。
マインドフルネスはこのように、「全然関係ないことを考える→今やっていることに意識を戻す」という訓練をすることでつらい記憶への対応力を養っていきます。
いじめを受けた人は、日常生活で急につらい記憶がフラッシュバックしてきてイライラしたり恐怖を感じたりしますよね。
この時に「今つらい記憶が浮かんでいるな」と気づいて意識的に受け止めて対処していかないといけないのですが、普通は受け止めるどころか記憶に100%集中してしまいダメージを受けてしまいます。
しかし、マインドフルネスで訓練を繰り返していくと、つらい記憶が浮かんだ時に段々と意識的に受け止めるができるようになります。
訓練していくと「つらい記憶を思い出す→今に意識を戻す」ができるようになり、思い出したことに気づいたので意識的に受け止めるができるからです。
ちなみに、この際に考えに反応して「全然違うことを考えてしまった。失敗だ!」「雑念ばかりだ!」などさらに考えだすと価値判断になってしまいます。価値判断するのではなく、ただ思考が起きていることに意識を向けるだけで構いません。
辛い記憶をマインドフルネスに受け止めるための練習
マインドフルネスの基本が分かったら、次はいじめを受けた辛い記憶をマインドフルネスに受け止めるためのエクササイズをやりましょう。
今回ご紹介するのは、呼吸を止めると苦しくなることを利用したエクササイズです。もしあればスマホのアプリでも良いので、ストップウォッチを用意します。
次は息を止めて苦しくなったら、苦しさをマインドフルネスに受け止めてください。
具体的には苦しさが生まれてきたら、それに意識を向けて価値判断せずにただ観察します。
観察していると、苦しさというよりも「もう限界だ」「こんなことをしても意味がない」といった思考が起きていて、苦しさを増幅していることに気づくかもしれません。
限界になったら、息を止めるのをやめてください。最初はかなり早い段階で限界が来ると思いますが、マインドフルネスに見ることができるようになると、1分以上も楽に止められるようになりますよ。
病気があって息を止めるのが難しい場合は、次のエクササイズを試してみてください。
どちらの腕でも良いので、挙手するか前に真っすぐ伸ばします。しばらくすると段々疲れてくるため、この疲れをマインドフルネスに見るようにします。
どちらのエクササイズもストップウォッチを用意して、ゲーム感覚でどのくらいできるか楽しみながらやってみてくださいね。
強い感情が起きたらじっくり観察することで乗り越えられる
エクササイズを続けてくると、いじめを受けた時の記憶がよみがえって来て強い感情に襲われることがあります。
そのような時は強い感情を回避するのではなく、逆にじっくりと観察することで乗り越えることができます。具体的には下記の3つを上から順番に、深呼吸をしながらやってみてください。
①今、起きている強い感情は体の中のどこで起きているのか探そう。
②見つけたら、じっくりと観察し続ける。どのような感覚?どこからどこまで感じる?温かいか冷たいか?動いているか止まっているか?研究者のように見てみよう!
③感覚を感じ続けていると、段々気にならなくなって最後には消えてしまいます。
最初はどうしても強い感情に飲まれてしまい、後悔する行動を取りがちです。しかし、何度もマインドフルネスを練習していくと、感情に飲まれず距離を取って見れるようになります。
どうしても強い感情で冷静になれないならラベリングを使おう
辛い記憶を思い出すと、強い感情が起きてどうしても冷静に見続けられないというケースもあるでしょう。そんな時は、ラベリングを使用します。ラベリングとは、例えば起きた感情に「怒り」「恐怖」といった名前を付けることです。
今回の場合は、記憶そのものよりも記憶によって生まれた怒りや恐怖など強い感情が問題になっているので、この感情に名前を付けてください。そして、感情が生まれたら、頭の中で良いので付けた名前を呼びます。
ネガティブな名前を付けると辛いという時は、感情が起きたら単に「ありがとう」と言うのも良い手です。
考えてみれば脳は意地悪している訳ではなく、危険を察知する機能が働いて気を付けてねと記憶を見せているだけです。
なら脳の機能が正常に働いていることに対して感謝して、記憶には反応しない。それが一番の対応ですね。
いじめなどつらい経験をしたら回避性パーソナリティ障害に注意!
いじめで何度も暴力を受けるなど長期的につらい思いをすると、様々なことを回避する傾向が出てきたリ回避性パーソナリティ障害という病気になったりすることがあります。
これは、今まで散々傷ついてきた経験から「もう傷つきたくない」という思いが強くなり、様々な事を回避してしまうようになった状態。つまり、何かあると逃げてしまうようになる訳ですね。
例えば人と会うと嫌な思いをするかもしれないから会わない、飲み会なども傷つくことがあるかもしれないから参加しないといった感じですね。
本人は回避している意識はないのですが、何となく「面倒臭い」など理由をつけて無意識に避けてしまいます。
こうなると、本当は人と会いたいしイベントにも参加したいのに出来ないのでストレスが溜まりますし、避けてしまう事から人付き合いが出来ないのでどんどん孤立していくでしょう。
「引きこもり」が問題になっていますが、引きこもってしまう根っこのところは回避性パーソナリティ障害といった病気や回避する傾向があるのも一因だと思います。
治療法はまず「自分はこれ以上、傷つきたくないから避けているんだ」と気づき、その上で意識的に行動していくこと。
もし面倒臭いと思ったら、よく心を観て傷つきたくないという思いが隠れていないかチェックしてください。
辛い体験を人に話すならだれに話すかが重要!
いじめを受けた辛い出来事を人に話したい時は、誰に話すのか?がとても重要になります。もしあなたの話を聞いた人が、だから何?とイライラした調子で言い出したら楽になるどころかより辛くなるでしょう。
また、共感してくれるどころか、「誰でも辛い事の一つはあるんだよ」と上から目線で言われた場合も同様ですよね。そのため、人の話を聞くことができて共感してくれる人に話してください。
ただ、そういう人が周りにない場合も多いですよね。そんな時は、カウンセラーといったプロの方に話しましょう。やはりプロだけあって場数を踏んでいるので、アドバイスが欲しい時も的確に言ってくれますよ!
いじめられた記憶に執着せずやりたいことに集中しよう
最後に伝えたいことは、いじめられた時の辛い記憶に執着せずにやりたいことに集中して人生を充実させた方が圧倒的に得だということです。過去に辛い出来事があっても、結局はもう終わった出来事です。
もちろん、現在進行形で辛い出来事が続いている場合は、周りの方や専門家の力も借りながら対処してください。辛い記憶を思い出しても、その度にマインドフルネスでいじめを受けていた過去から現在に戻り、今をしっかり生きましょう。
まとめ
いじめを受けた辛い記憶への対処法を、ご紹介しました。
一時期は非常にイライラして、大変だったことを思い出します。ですが、マインドフルネスを使うことで、対処できるので同じ状況になっても安心してくださいね。
いじめといったひどい体験をすると、「私はこんな体験をしたから幸せになれない」など、消極的に生きるようになりがちです。
でも、どんなことがあっても、だからと言って過去の奴隷になる必要はありません。マインドフルネスを使って、今をはっきりと自覚的に生きましょう!
別記事も合わせて読むことでより対処しやすくなります
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
今回はマインドフルネスを用いた、いじめの辛い記憶の対処法をメインにご紹介しました。実は町草のブログ内の別記事には、いじめの辛い記憶への対処に役立つものが他にもあります。
今回の記事と合わせて読むことで、より対処しやすくなるのでぜひご覧ください。
いじめの記憶が原因で、「非常にイライラしてしまう」なら以下の記事で対処法を学びましょう。
そもそも、いじめの辛い記憶を思い出したくもないのに何度も思い出すのは何で?対処法はどうすればいい?なら以下の記事をご覧ください。今回の記事は心を中心に書いていますが、こちらの記事は脳の働きをメインに書いています。
マインドフルネスを、もっと深く学びたい!というなら、以下の記事をご覧ください。
初心者向けのマインドフルネス本を、管理人が12冊選んだ記事です。どれも読破しており、ちゃんと内容が初心者向けになっていることを確認してますので安心してくださいね。
参考文献
幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない: マインドフルネスから生まれた心理療法ACT入門 (単行本)ラス・ハリス
よくわかるACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー) 明日からつかえるACT入門ラス・ハリス
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)をはじめる セルフヘルプのためのワークブックスティーブン・C・ヘイズ