「ハーバード&ソルボンヌ大学根来教授の超呼吸法」を読んで
最近では新型コロナウイルスが原因で、仕事も自宅から参加できるリモートワークが中心になっている。ところが、自宅で一人仕事していると、集中できない・精神的に不安定になってくるなど苦痛を訴える人が出て来た。
今回読んだ「ハーバード&ソルボンヌ大学 根来教授の 超呼吸法」は、自宅で一人仕事していて集中できなかったり精神的に不安定になってしまった方にぴったりの本。
著者は、医者で医学博士の根来秀行さん。タイトルにあるように、ハーバード大学医学部とソルボンヌ大学医学部で客員教授を務める。
簡単にこの本を解説すると、「特殊な呼吸法を行うことで、そわそわした心を落ち着けストレスにも強くなることができる」となる。
「でも、呼吸だけでそんな効果があるの?」もっともな疑問だ。なぜ効果あるのか説明が無くて、本当かなあ?ともやもやして終わる本は多いから不安になるのも分かる。
ところが、本書は著者が医者なだけあって医学的になぜ効果があるのかしっかりと説明している。もちろん、専門的な難解な話はなく、一般の人でも分かるように書いてあるので安心して欲しい。
読んで分かったこと
「ハーバード&ソルボンヌ大学根来教授の超呼吸法」を読んで、分かったことで主なものをまとめる。
知りたい情報が載っているのか分からないという方は、ぜひ参考にしてほしい。
- ストレスに強くなる・セロトニンを増やすなどに効果がある10種類の呼吸法のやり方
- 脳疲労とは何で、どうすれば解消できるか
- グリンパティックシステムという脳の老廃物除去システムとその仕組み
- 交感神経と副交感神経という自律神経について。それぞれのスイッチの入れ方
- 仕事や勉強で集中力をできるだけ持続させる方法
- 呼吸の仕組み。体に入った酸素の行方とあまり知られていない二酸化炭素の重要性
- ノルアドレナリンやアドレナリン、セロトニンは体の中で何をしているか?
- 毛細血管の重要性
- 睡眠の質を上げる秘訣
- 神経が高ぶっている時に落ち着いて寝る方法
- 成長ホルモンの重要さと分泌されるタイミング
- マインドフルネスはなぜ効果があるのか?
「ハーバード&ソルボンヌ大学根来教授の超呼吸法」を読んで思ったこと
最初に本を見つけた時は、少し怪しいなという印象を持った。タイトルからして、よくある自己啓発書だろうと思ったからだ。
ところが、読んでみるとただ効果があると言うだけではなく、こういう実験があって結果はこうなったからだと根拠も書いてあるしっかりした本だった。
それに専門用語などは分かりやすいようにかみ砕いて解説してあるため難解さはなく、一般の人もすいすいと読める。
本書で紹介されている10種類の呼吸法は以下のものである。
①副交感神経のスイッチを入れ心を落ち着かせる「ベース呼吸法」
②不安やストレスをすっきりさせる「4・4・8呼吸法」
③集中力高められる「1・1呼吸法」
④細胞呼吸を活性化できる「CO2呼吸法」
⑤老廃物を流しやすくする「リンパ呼吸法」
⑥モヤモヤしたこころをすっきりさせる「10・20呼吸法」
⑦セロトニンを増やす「下腹部呼吸法」
⑧呼吸筋を鍛えられる「ドローイン」
⑨様々な効果がある「完全呼吸法」
⑩雑念にとらわれなくなる「マインドフルネス呼吸法」
具体的なやり方は、ここでは紹介しないため本書を参照してください。(そこまで書くと営業妨害になるため)
これらの呼吸法を、状況に合わせて心を整えていく。
例えば寝ても一日の疲れが取れないと感じる時は、リンパ呼吸法を寝る前に行う。勉強や仕事を開始する前は1:1呼吸法、合間に休憩するならベース呼吸法や4・4・8呼吸法という具合だ。
実際にやってみると確かに呼吸するだけで落ち着きが得られ、より集中できるようになった。なにより何か用意する必要もなく、ただ呼吸するだけなのでどこでもできる。
管理人は自宅で一人仕事をしているが、段々と孤独感が強くなったりやる気が起きずついだらだらと作業してしまったりすることもある。
そんな時も呼吸法を導入することで、気分に振り回される・鬱っぽくなることが減った。もちろん、呼吸法だけでなく、1日を規則正しく送り睡眠をしっかり取るようにした効果もあるだろう。
仕事自体への取り組みも、本書で紹介されていた集中法を取り入れることで改善された。本書によると、特に高い集中状態は誰でも15分~25分しか続かない。そこで、15分単位で時間を区切り、合間に呼吸法を使い副交感神経のスイッチを入れ自律神経のバランスを取る。
似たような方法としては、25分で区切り合間に休憩を挟むポモドーロ・テクニックが知られている。このポモドーロ・テクニックを使用している最中も、休憩時間に呼吸法をする方が効果的にリフレッシュできるだろう。
本書では「読んで分かったこと」でも述べたように、毛細血管の重要性や睡眠の話が出てくる。どちらも呼吸法を行うことで改善して、健康に役立てることができるからだ。
特に睡眠の話では、寝てから最初に訪れる深いノンレム睡眠中に脳に溜まった老廃物を除去するグリンパティックシステムが興味深い。このシステムがうまく働かず老廃物が除去されないと、アルツハイマー病やパーキンソン病になってしまう。
では、深いノンレム睡眠を取るにはどうすれば良いか?これも筆者は一定時間に起きて太陽の光を浴びるといった一般的に言われる方法以外にも、呼吸法を行うことで睡眠の質を高められるという。
呼吸法によって、セロトニンを増やすことができる。セロトニンは睡眠に重要なメラトニンの原料になるので、睡眠の質を高めることに役立つとのことだ。また、神経が高ぶってしまい寝付けない時は、4・4・8呼吸法で鎮めることができる。
管理人はどうも睡眠の質が悪く不眠症にもなって困っていたので、色々な睡眠関係の本を読み漁ったことがある。その関係でグリンパティックシステムは知っていたが、適切にシステムを働かせるために呼吸法が使えるという点は新鮮だった。
最後にマインドフルネスについて、本書を読んで新しい発見があった。マインドフルネスとは、今ここの状態に意識を向けること。例えば呼吸法ならコントロールしようとせず自然な呼吸を観察し、雑念が沸いて来ても囚われずに呼吸の観察に戻る。
そうしていくと、過去にあった辛い出来事や未来を考えて不安に思うといったストレスを防ぐことができる。
管理人も長年マインドフルネス呼吸法や瞑想を行っているが、医学的になぜ効果あるのかがよく分からなかった。
ところが、本書ではマインドフルネスのメカニズムとして、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)の低下を挙げていた。
デフォルト・モード・ネットワークは前頭前野や前帯状回などのネットワークで、車のアイドリングのように何もしていない時に働いている。以前は何もしてない時は脳も休んでいると考えられていたが、実際にはデフォルト・モード・ネットワークが働いていることが分かった。
デフォルト・モード・ネットワークの活動量は、なんと全体の8割にも及ぶ。これだけ活発に活動しているのだから、大量のエネルギーを使い脳細胞の酸化や大量の老廃物を排出してしまう。
ところで、このネットワークは過去にあったことを思い出したり(ほとんどは記憶に残りやすい感情的で不快なできごと)、未来を想像したりといった事も含まれる。でも、どちらもイライラしたり、不安になったりするだけであまり役立っていない。
役立っていないのに、たくさんのエネルギーを使って脳をより疲れさせるのだ。
マインドフルネスは、このデフォルト・モード・ネットワークの活動を減らして脳を休めることができる。
そういえば、うつ病の人は色々なネガティブな思考が頭の中でぐるぐる回っていることが多い。つまり、デフォルト・モード・ネットワークが過剰になっているのだ。何もしていないのにいつも疲れていて、ちょっとしたことすらおっくうに感じる
あれは過剰に働いているデフォルト・モード・ネットワークが、どんどんエネルギーを使ってしまったのが原因だと考察できる
実際にマインドフルネスがうつ病の治療に使われるようになったのも、デフォルト・モード・ネットワークの活動量を抑えるためと言える。
まとめ
長々となったが、「ハーバード&ソルボンヌ大学根来教授の超呼吸法」はここ数年読んだ本の中でも特に役立った。
集中力が高まり、やる気が起きない・不安や焦りがある時もすぐに対処できるようになった。これだけの効果がわずか1500円程度で得られ、抜群のコストパフォーマンスだ。
2020年4月23日現在も続いている新型コロナウイルスは、いつ収束するか分からない。先の不透明さから起きる不安や、リモートワークによる自宅で一人仕事することから生じる孤独感・やる気や集中力の問題。
ぜひ本書を読んで、これらの問題の解決に呼吸法を役立てて欲しい。
今回読んだ本
ハーバード&ソルボンヌ大学 根来教授の 超呼吸法 著:根来秀行