マインドフルネスストレス低減法は体の痛みを緩和できる
マインドフルネスストレス低減法は、病気によって体に持続する痛みがあり苦しいという方に向けて開発された心理療法です。
開発者はマサチューセッツ大学医学大学院で教授をしていた、心理学者ジョン・カバットジン博士。
さすがに1記事でマインドフルネスストレス低減法の全てを書くことは難しいので、今回はどのような心理療法なのか?・なぜ効果があるのか?・エクササイズのやり方をご紹介します。
より詳しく学びたい方は最後に参考文献を載せているので、そちらを読んでみてください。
マインドフルネスストレス低減法はこんな人におすすめ!
- 病気で持続する痛みがあって苦しい
- 痛みがあるけど、妊娠中で薬を使いにくい
- ネガティブなことばかり考えてしまい、鬱々としている
- 不安を強く感じて、ストレスを抱えやすい方
マインドフルネスとは?
初めに、マインドフルネスとは何なのかについて説明します。
今起きていることに気づき、価値判断せずに観察し受け入れて手放す
マインドフルネスは、「今起きていることに気づき、価値判断せずに観察し受け入れて手放す」ことです。
と言っても、これだとよく分かりませんね。
「今起きていることに気づき」は、呼吸や歩行など今行っていることです。身体に持続する痛みも確かに今起きていることですが、同時に呼吸も今起こっていることです。
しかし、痛みは強い感覚なので、普通は痛みばかり見て他は気づきません。痛みばかり意識する…これは苦痛ですね。でも、それなら他の感覚も意識することで、苦痛を減らすことができます。
「価値判断せずに観察し」は、良いとか悪いといった判断をせずに、ただ観察していくことです。痛みがあれば、人はネガティブなことばかり考えます。でも、ネガティブなことを考えれば苦痛は増大し、ポジティブなことを考えてもむなしいだけです。
身体に痛みがある。既に病院で検査してもらって結果も出ている。それなら、価値判断する必要はありません。
「受け入れて手放す」は、痛みそのものやネガティブな思考を抑圧したり、何かで紛らわせようとせず、受け入れることです。
実は抑圧したり何かで紛らわせようとすると、余計に意識してしまいより苦しむことが判明しています。近年の心理療法では、抑圧したり紛らわせることを体験の回避と呼び、しないように指導します。
最後の手放すは、かなり難しいと思うでしょう。でも、大丈夫。受け入れたら後は放っておけば、勝手に消えたり気にならなくなります。
例えば電源が切れないテレビが部屋にあるからと言って、ずっと見る必要はありません。放っておくけど、あることは受け入れる。受け入れなければなんでこんな物があるんだ!と苦痛が増大するだけです。
マインドフルネスは、実際にやってみないと効果はありません。どれも簡単にできるエクササイズなので、どうなるかは試してみて体験してみてください。
マインドフルネスストレス低減法は8週間で集中して学ぶ
マインドフルネスストレス低減法は、8週間のプログラムから構成されています。具体的には8週間を通してマインドフルネスの考え方や心理教育、エクササイズを通して実践していきます。
学ぶには様々な団体が実施しているプログラムに参加するか、ワークブックを購入しCDを聴きながら実践していきます。
ちなみに、使えるワークブックは最後に参考文献としてご紹介しています。
うつ病向けに転換したものがマインドフルネス認知療法
名称が似ている心理療法に、マインドフルネス認知療法があります。認知行動療法とマインドフルネスストレス低減法を合わせた心理療法で、うつ病からの回復するために作られました。
開発者は、オックスフォード大学のマーク・ウィリアムズ博士です。マインドフルネス認知療法でもマインドフルネスのエクササイズを行いますが、ほぼ同じものがあります。
なぜマインドフルネスが痛みの緩和に役立つの?
マインドフルネスを身に付けることで、今までは意識が痛みに過剰に向いていて余計に辛くなっていたのを、呼吸や身体の動きなどに向けることで緩和できるからです。
体のどこかに持続する痛みがあると、通常はどうしても意識が痛みに向いてしまいます。痛みが意識の中心になってしまうと、痛みをより強く感じるようになってネガティブな思考ばかり出てくるようになります。
「こんな痛みがあるんじゃ生活できない」「一生このまま何て嫌だ」。持続している痛みがあることでうつ病になってしまうケースが知られていますが、納得ですね…。
ちなみに、大半の人は痛み対策に感じないように振る舞って抑圧したり、刺激があるもので紛らわせようとします。
実は抑圧したり紛らわせる行動は「体験の回避」と呼ばれていて、余計に痛みを意識してしまう行動なんです。
マインドフルネスは抑圧したり紛らわせるのではなく受け入れて手放すので、体験の回避をしません。しないので、余計に痛みを意識することもなく、痛みがあっても行動できるようになります。
これがマインドフルネス低減法が、持続する体の痛みに効果がある理由です。
エクササイズでマインドフルネスを体験しよう
それでは、簡単なエクササイズからやり方をご紹介するので、実際にやってみましょう。エクササイズをすることで、痛みをマインドフルネスに見られるようになります。
どのエクササイズも、指定されたものを良いとか悪いといった価値判断せずに感じるようにしてください。
なお、エクササイズやったけどその後はどうすれば良いのか分からないという質問が多いので、最後にマインドフルネスを日常的に活用する方法も載せています。
エクササイズ中に関係ないことを考えたら
どのエクササイズも実行している最中に、必ず全然関係ない事を考えたり思い出したりします。考えたり思い出したことに気づいたら、意識を一瞬だけ向けてから価値判断せずにエクササイズに戻りましょう。
何度も関係ない事を考えたり思い出したりする→気づいてエクササイズに戻るを繰り返すことで、痛みへの対応力が上がっていきます。
マインドフルネス入門にぴったりなレーズンエクササイズ
マインドフルネス入門として、レーズンのエクササイズがよく使われています。もしレーズンがない場合は、アーモンドやチョコレート、グミなどでもできますよ。
まず、1つのレーズンを手のひらに置いて、じっくり観察します。レーズンの色合いはどうでしょうか?また、シワはどんな感じになっていますか?
じっくり観察したら、つまんで口に入れてください。
いきなり噛まずに、口の中で転がしてみましょう。味や食感はどんな感じでしょうか?
味わいながら、飲み込みます。
普段このように良く味わって食べることは、ほとんどありません。
普段食べているものだからこそ、味も食感も知っているはずです。しかし、ゆっくり味わって食べると、どれほどの感覚を見逃していたのか気づきます。
レーズンだけでなく、普段の食事もよく観察しつつゆっくり味わって食べてみると新しい発見がありますよ。
どこでもできる呼吸のエクササイズ
続いては呼吸瞑想法と呼ばれている、エクササイズをやってみましょう。椅子や座布団など、背筋が伸びていればどのような座り方でも構いません。
呼吸のマインドフルネスは、文字通り呼吸によって動くお腹の動きを観察するだけのシンプルなエクササイズです。
普通に呼吸しつつ、おへその辺りに手を置きます。吸う・吐くといった動作ごとに、お腹が膨らんだり縮んだりすることに気づいたでしょうか?
呼吸の観察を繰り返しいると、必ず関係のないことを考えだします。考えだしたら一瞬だけ思考に意識を向け、次に呼吸の観察に戻ります。
ちなみに、呼吸はコントロールする必要はありません。タイマーを持ってきて、10分だけやってみてくださいね。
深い落ち着きが得られる静座瞑想法
こちらも座布団などを敷いて床に座るか、椅子に座って行います。背筋はしっかり伸ばし、目は閉じても開いても構いません。目を閉じているとすぐに眠くなってしまう場合は、開けておくのがおすすめです。
最初は呼吸のマインドフルネスと同じで、呼吸を観察していきます。次は意識はお腹の辺りにあると思いますが、段々と広げて体全体を観察してください。お腹から上半身・下半身に向けて意識を広げていきます。
呼吸のマインドフルネスでは、関係ないことを考えたり思い出したりしたら、一瞬だけ意識を向けて呼吸の観察に戻るようにしました。
静座瞑想法は関係ない事を考えたり思い出したら、その思考に意識を向けて消えるまで観察し続けます。もちろん、良いとか悪いといった価値判断はしません。
観察し続けて思考が消えたら、呼吸の観察に戻ります。タイマーをセットして最初は10分、慣れてきたら20~30分ほどやってみましょう。
歩きながらマインドフルネスを学ぼう
ずっと座ってばかりいると疲れるので、今度は歩行瞑想法をやってみましょう。部屋の中で良いので、視点を前方に固定しゆっくりと歩きます。
ただし、ただ歩くのではなく、体の感覚を観察することを忘れずにしましょう。
歩くには右足と左足を交互に動かす必要がありますが、それぞれどのような感覚でしょうか?床に足の裏が触れる感覚は?
段々と慣れてきたら、足だけでなく全身も意識してください。歩くときに足だけでなく手や肩など、色々な部分が動いていることが分かると思います。
ちなみに、外で歩行瞑想法をやる場合は、視線は前だけでなく左右にも気を配り、危険が無いように実行してください。
今の体の状態が分かるボディスキャン瞑想
体を細かいパーツに分けて、一つ一つ観察していくエクササイズです。横になった状態で行いますが、どうしても寝てしまう場合は椅子に座った状態で行いましょう。
足の指から開始し、足の裏→足のひら→踵→足首→すね→ふくらはぎ→ひざ→ふともも→ももと見ていきます。終わったら、反対側の足も同様に見ていきましょう。
続いて、お尻→股間→腰→下腹→胸→背中→肩と観察します。足は片方ずつやりましたが、手は同時に観察していきます。上腕→肘→前腕→手首→手。
最後は、首→頬→口→鼻→目→額→頭と見ていきます。もし途中で違和感などを感じたら、そこをしばらくマインドフルネスに観察します。
なお、どのタイミングで次に移るかは、吸う・吐くの1呼吸が終わったら次という形で行ってくださいね。
マインドフルネスストレス低減法を日常に活かすには?
今まで行ってきたエクササイズは、日常のあらゆることをマインドフルネスに見ることができます。例えば呼吸は常にしていることですし、歩く・食事・座るもそうですね。
仕事すらもPCで入力するならキーボードを打つ手の動きや、マウスを動かす手をマインドフルネスに見ることができます。
持続する痛みがあるのなら、一瞬だけ見て呼吸や身体の動きを観察するようにします。
痛みからネガティブなことを考え始めたらすぐに気づき、静座瞑想法で行ったように価値判断せずにただ観察していきます。
思考はとても素早く起こるので、最初はかなり後になってから気づくと思います。
しかし、エクササイズを繰り返していくことで気づく力が養われるので、考えだしたらすぐに気づけるようになりますよ。
マインドフルネスのデメリットはある?
マインドフルネス自体は意識の使い方を変えるだけなので、特にデメリットはありません。ただし、誤ったやり方でマインドフルネスを行うと、余計に痛みが増したり苦しくなったりするので気を付けてください。
例えばマインドフルネスのエクササイズをやっていると、「必ず」関係のない事を考えたり思い出したりすると書きました。
そういった思考は人間なら当然あることなので、エクササイズではそれもマインドフルネスに受け止めて手放すようにします。
ところが、たまに思考を敵視してしまう場合があります。敵視してしまうと、思考が沸いてくるたびにイライラしてマインドフルネスに見れません。
エクササイズをやっても落ち着くどころか逆に苦しくなるでしょう。
解決方法は思考は当然あるものと理解し、価値判断することなく受け止めて手放してください。
まとめ
マインドフルネスストレス低減法のついて、ご紹介しました。
思えば初めてマインドフルネスに触れたのは、ジョン・カバットジン博士の本からでした。最初はエクササイズをやってみたものの、よく分からず途方に暮れたのを思い出します。今思えば、思考を敵視するような誤ったやり方でやっていたのが原因でした。
今回の記事はそのような経験から、より分かりやすいようにマインドフルネスのやり方を紹介するように心がけました。
持続する痛みや不安など、マインドフルネスを身に付けることで苦しみを緩和できるように祈っています。
参考文献
マインドフルネスストレス低減法 ジョン・カバットジン
4枚組のCDで実践する マインドフルネス瞑想ガイド ジョン・カバットジン