今回は、「聴覚障害のある子供をろう学校と普通の学校どちらに入れるべきか?」を管理人の体験も踏まえて、考えてみたいと思います。
始めに管理人の経験について少しだけお話させていただくと、小学校3年生くらいから聴力が落ち始めて卒業する頃にはほとんど聞こえなくなりました。
一応、補聴器を付ければある程度の音は聞き取れますが、感音性難聴のため会話は聞き取れません。
そこで、隣の市にあるろう学校と家の近くにある普通の中学校どちらにするか両親から聞かれた記憶があります。
よく考えずに近いから「普通の中学校」と答えたのですが…。
普通の学校に入学したところ、地獄のような体験をしてトラウマになり長い間苦しみました。
ですからそうならないように、読者がもし同じ状況にいる方ならお子様のためにも一読をお願いいたします。
子どもは障害についての理解が浅いので両親がよく考える必要がある
管理人のように、どちらに入るか迷ったら子供に聞いて決めさせる方も多いと思います。
しかし、管理人の経験も踏まえてアドバイスすると、子どもは聴覚障害について理解がまだかなり浅く将来を考えることが出来ないので両親がしっかりと考える必要があります。
ちなみに小学校が普通のところだったら、周りが知らない子ばかりになるろう学校へ行こうとは不安なので思いません。
なので、ほとんどの子は「普通の中学校が良い」と答えると思います。
ですが、それで適当に判断してしまうと後々かなり苦労するので、大人が我が子はどちらに向いているのかよく考えて結論を出してください。
次の項目では、ろう学校と普通の学校のどちらを選ぶ際のポイントをご紹介します。
どちらか選ぶポイントは「自宅から通えるか」と「症状の重さ」を考慮しよう
まず、自宅から通えるろう学校があるのか調べましょう。
ろう学校は残念ながらそこまで数が多い訳ではないので、住んでいる所によってはどうしても通えないケースが出て来ます。
※2020年12月2日追記 ろう学校出身の方より、情報提供がありましたので追記します。提供して頂いた方、貴重な情報ありがとうございました!
その方の通っていたろう学校には寄宿舎があり、平日は寮生活→金曜日に実家に帰宅→月曜日にろう学校へという形だったそうです。
記事では遠くて通えなければ引っ越すしか…としていましたが、上記のように寮があるろう学校なら遠くても通えるので、寮があるか学校へ問い合わせしてみてください。
また、普通学校に馴染めず中学2~3年生でろう学校へ転校してきた方もいたそうで、思ったよりも柔軟に対応してくれるようです。
ろう学校に通えるようなら、次は子供の聞こえの程度から普通の方とどちらに通うべきか判断します。
ただ、難聴は見ても分からない障害なので、誤って症状をかなり軽く判断してしまうことが起こりがちです。
ですので、お子様と「筆談や手話といった耳が聞こえなくても理解できる形で」日常的にコミュニケーションを取り、どのくらい聞こえるのか聞きだしてくださいね。
なお、難聴の種類などは以下の記事が参考になるので、一度目を通していただけると幸いです。
補聴器を付ければ大体聞き取れる場合は普通の学校も視野に入る
伝音性難聴で、補聴器を付ければ大体聞き取れるようなら普通の学校が視野に入ります。
ただ、静かなところで一対一なら聞こえるけど大人数になると聞き取りが難しくなるなど聞こえは単純ではありません。
そのため、授業なら教師が一人で喋るので大丈夫だと思いますが、大人数で議論するといった場合に聞き取りが難しく参加できないケースも出て来ます。
どんな時に聞き取りが難しくなるのか把握しておき、あらかじめ教師に伝えておいてください。
差別されることを恐れて、症状を軽くしたり隠してしまったりする事もあると思います。
でも経験から言わせていただくと、教師側も聴覚障害の知識がある訳ではないのでちゃんと伝えないとサポートが困難です。
理解不足が原因で周囲もイライラしてしまうので、はっきりと伝えた方が良いでしょう。
なお、聴覚障害は段々と進行していくことがあるので、在学中も自宅でのコミュニケーションを密にして聞き取れるかどうか確認してあげてくださいね。
感音性難聴や症状が重く補聴器を付けても聞き取りが難しいならろう学校がベスト
感音性難聴や症状が重く補聴器を付けても聞き取りが難しいなら、やはり聴覚障害者を想定したろう学校がおすすめです。
障害者も平等に教育して欲しいと思うのは分かりますが、残念ながら現実として普通の学校は耳が聞こえる健常者を想定して教育を施す場所になります。
教師側も聴覚障害への知識がないため、補聴器を付けているなら健聴者と同じくらい聞こえるんじゃないの…?と困惑するだけです。
そういう状況ですので、聴覚障害への配慮は席は聞こえやすい前の方にするぐらいしかありません。
また、障害者が健聴者に紛れて集団生活をする場合、どうしてもいじめのターゲットになりやすい問題もあります。
管理人も同級生の一人からしょっちゅう難癖を付けられて、補聴器を取り上げられたり暴力を振るわれたりされました。
経験者としてアドバイスすると、こういう状況では自己肯定感も育ちにくくトラウマまで抱えるはめになるので、症状が重い状態で普通の学校に入るのはおすすめしません。
重度でもどうしても普通の学校へ入るしかない時の心構え
もし様々な事情でどうしても普通のところに入るしかないなら、できるだけ快適に学校生活を送ってもらうために、次の9つの心構えを実行してみてください。
- 学校側に症状をはっきりと伝えておく。
- 少しでも情報が入るように、タブレットmimiなどサポートツールの使用を認めてもらう。
- 筆談用のノートを持たせておく。
- 重要な事は筆談で連絡してもらうようにお願いする。
- 学校側にも限度があるので求めすぎない。
- 教師なのだから障害児への理解があるはずと決めつけない。
- 些細な事でも良いので、今日あったことなど子どもと自宅でコミュニケーションを取る。
- 子どもの様子をチェックし、イライラする・感情が薄い・異様に甘えてくるなどあればかなりストレスを抱えているので優しく何があったのか聞き出す。
- 耳が聞こえないのは病気のせいで、あなたがおかしい訳ではないとはっきり伝える。
学校側に症状をはっきりと伝えることが重要です!
まず学校側と話し合い、聞こえの程度はどんな感じなのかしっかりと伝えておきましょう。
「うちの子は静かなところで一対一なら比較的に聞き取れるようなんですけど、騒がしいところだとほとんど聞き取れないようです」といった感じです。
特に感音性難聴だと、補聴器を付けても会話を聞き取れない症状が出てきます。聞こえるって口から発された音が脳に伝わることで、「こう言っているんだな」となりますよね。
感音性難聴は耳の奥にある、「音という空気の振動を電気信号に変えて脳に伝える部分」に異常が出ています。ですから、補聴器を付けて音を増幅させても、脳に正しく伝わらないので聞き取れない症状が出てきます。
この感音性難聴の症状は、医療従事者ならともかく教師はまず知りません。
だから、まず症状をはっきりと伝えないと「この子は知能に異常があるのでは?」と勘違いされることも普通にありますよ。
だって普通の人は、「聴覚障害者でも補聴器があるなら聞こえるはず」という認識です。それでも聞こえないなら、知能の問題で言葉を理解できないのでは?と考える人も出てきます。
でも補聴器を付けても聞こえないなら、学校としては対応できないとはっきり言われるかもと不安になるかもしれません。
安心してください。現在では補聴器以外のサポートツールが揃っているので、そういった物を使えば耳が聞こえなくても授業もしっかり理解できるようになります!
タブレットmimiといった聴覚障害サポートツールの使用許可を取ろう!
聴覚をサポートしてくれるのは、補聴器だけではありません。現在では補聴器以外のサポートツールを使用することで耳が聞こえなくても快適な生活が送れます!
管理人も耳が聞こえないので色々と試してきましたが、学校なら「タブレットmimi」というサポートツールがベストでしょう。
タブレットmimiはタブレット型の機器で、周囲の声を拾って文字に変換してディスプレイに表示してくれます。使うには電源を入れるだけで良いので、後は机の上に置いておけば勝手に先生の声を拾ってどんどん文字に。
似たような機器は他にもありますが、他は文字へ変換中はボタンを押しっぱなしにする必要がある・精度がいまいちなど問題がありました。
方言には対応していない・話す人の近くないと声を拾えないので机を中央の一番前にといったデメリットはありますが、実際に自宅で試したところ精度も良く十分に実用的です。
スマホアプリでも音声を拾って文字として出力してくれるものはありますが、スマホはゲームやネット閲覧なども出来てしまうので学校側としてはちょっと許可しにくいでしょう。
しかし、タブレットmimiならできることは音声を文字にすることだけで、インターネットは見れない・英語の翻訳なども不可なため学校側も許可しやすいと思います。
AIボイス筆談機「タブレットmimi」 ※左のリンクより、タブレットmimiの公式サイトへ移動できます。
なお、タブレットmimiについては、当ブログの別記事2つに詳細が載っていますので参考にしてください。
学校へのお願いと自宅で行うべきこと
「知らないとかなり困ること」例えば行事予定の連絡や今度の中間や期末テストの範囲などは、目で見て分かる筆談で伝えていただけるようにお願いしてください。
なお、学校側でも限界はあるので、あまり求めすぎても教師側のストレスが溜まるばかりです。
ある程度は割り切った方が精神的にも楽になります。
健聴者の子どもたちに混じって学ぶなら、心配なのがコミュニケーションです。
自宅でのコミュニケーションが学校でのコミュニケーションの基礎になるので、自宅でも出来る限り筆談や手話を使って話すようにしてください。
この際にやたらイライラしていたり感情に乏しい、異様に甘えてくるといった行動があれば、かなりストレスをため込んでいる可能性が大です。
こういう時は慌てて怒るように何があったのか聞きがちですが、怒ると委縮して言えなくなるので優しく聞いてみてください。
なお、いじめで暴力を受けている可能性もあるため、息子なら父親と・娘なら母親とそれぞれ一緒にお風呂に入ってみて、体に不自然なアザがないかチェックをおすすめします。
管理人もそうでしたが、こういった暴力を受けた事はなかなか伝えられません。被害が広がる前に、よく観察して気づくことが重要です。
聞き取りが難しいなら筆談が基本になるので、筆談用のノートを持たせておきましょう。
最後に子どもは遠慮や配慮がなく、耳が聞こえないことについて「お前はおかしい」とはっきり伝える子が出て来ます。
管理人も同級生から、お前はおかしいぞと何度も言われました。
学校にはたくさんの子がいますが、耳が聞こえないのは自分一人。
そんな時にそういうことを言われると、多感な時期でもあり非常に傷つきます。
なので、安心させるためにも単なる病気であなたがおかしい訳ではないとはっきり伝えてあげましょう。
聴覚障害者が普通の中学校や高校に入った時にあった問題点
聴覚障害者の管理人が普通の中学校や高校で生活してみて、実際に感じた問題点をまとめてみました。
なお、管理人は両耳とも感音性難聴で聴力は100dB、補聴器を付けても聞き取りが難しい状態です。
- 教師側に聴覚障害の知識が無くほとんどの人が対応できない
- 小学校と違い中学校からより会話によるコミュニケーションが主になるが、会話が困難なので孤立する
- 学校の授業が聞き取れないので、勉強が教科書を読む独学中心になる
- どうしてもいじめのターゲットになりやすい
- 自己肯定感が育まれにくく、自信を持ちにくい
- 友人を作るのが困難
教師なら聴覚障害にある程度は知識があるのだろうと思っていたのですが、普通の人と同じくほとんど知らない状態でした。
つまり、「聴覚障害でも補聴器あるんだから聞き取れるでしょ?」ですね。
そんな状態なので、聞こえないというとなんで!?と驚かれたり、なんだこいつと睨まれたこともありました。
小学校の時はコミュニケーション能力もあまり発達していないため、手振り・身振り・表情も含めたノンバーバルコミュニケーションがまだまだ多い時です。
ところが、中学校くらいになると言語能力が発達し始め、会話がコミュニケーションの主な手段になります。
なので、小学校は何とかなっても中学校から聴覚障害者はついて行けず、孤立しやすいという状況に…。
学校の授業は音声言語で行いますが、やはり聞き取れないので勉強は教科書を読む独学が中心でした。
いや、黒板に書いてあることを見れば良いでしょ?と周りからは言われるのですが、黒板を見ても情報量が圧倒的に不足していて何なのか分かりません。
管理人がおとなしい子だったのもありますが、中学時代に同級生の子からいじめを受けていました。
殴る蹴るといった暴力を振るわれ、人が多い所で私をいきなり指さして何か言う。そうすると周りの人が私を見て笑うとのはしょっちゅうでした…。
そういう学校生活でしたので自己肯定感は育まれず、むしろ当時は無気力状態が多かったと記憶しています。
管理人の努力不足もありますが、うまくコミュニケーションができないのもあって友人を作るのが困難でいつも独りぼっちでした。
ろう学校でも問題はあるけど同じ障害を持つ仲間がいる点がプラスになる
じゃあ、ろう学校に通えばすべて解決するのでしょうか?残念ながら、そんな訳ではないようです。
今回記事を書くにあたってろう学校について調べてみたところ、子供を通わせているご両親や通っている本人から色々と不満があるようで…。
授業は聴覚口話法と言って、つまり口で話して行うので普通の学校とあまり変わらないようです。
また、授業のレベルも低く、勉強をできるようにしたいなら普通の学校の方が良いという意見も見ました。
ただ管理人の経験から勉強のみを見るなら普通の学校でも独学が中心になるので、どちらでも良いと思います。
ろう学校に通うメリットで特に大きいのは、同じ障害を持つ仲間ができる点でしょう。
聴覚障害者の心理臨床〈2〉と言う本で、聴覚障害者の心理発達に大切なポイントとして、同じ障害を持つ仲間や年上の方がいる点を挙げていました。
管理人も経験がありますが、障害者向けの就職説明会でたまたま会った同じ聴覚障害者の方と話してどれほど救われたか…。
私は、ずっと「お前はおかしい」と周りから言われていました。
耳が聞こえないのだから仕方ないだろうと反発していましたが、同じ障害を持っている人と筆談してみて同じ悩みを持っていることが分かり自分だけじゃなかったんだと。
このように、同じ障害を持っている人がいることで心理発達にもプラスになるため、特に障害が重い場合はろう学校がおすすめです。
まとめ
意外と子どもが聴覚障害になったら、ろう学校と普通のところどちらに入れるべきなのかネットではあまり情報がありませんでした。
そこで、自身の経験も踏まえて今回の記事を書いてみました。
場合によっては近くに通えるろう学校がなく、症状が重くても普通の学校に入るケースもあるでしょう。
聴覚障害を抱えたお子様の幸せを願うなら、ぜひ記事内に挙げたポイントを実行してみてくださいね。