今回のテーマは、「やめたいのに嫌な記憶ばかり何度も思い出してしまう仕組みとその対処法は?」です。
このテーマにしたのは、管理人も同様の悩みで長年苦しんで来たからです。私は両耳に感音性難聴という病気を抱えていますが、周りに理解されず暴言や暴力を受けて来ました。
そういった、思い出したくない暴言や暴力を振るわれた記憶が何度も思い浮かんで来て本当に苦しみました。正直トラウマになっていて、フラッシュバックしていたのでしょう。
ところが、現在はその仕組みと対処法を知り、思い出す頻度がかなり減ったばかりか思い出しても冷静に対処できるようになりました。
仕組みと対処法を知って、読者の方も嫌な記憶から解放されませんか?
なぜ嫌な記憶ばかり何度も思い出すのか?
そんなことをしても仕方ないことは理解しているでしょうし、したくないと強く思っているはずです。しかし、なぜかどうしても嫌な記憶ばかり何度も思い出してしまいますよね。
色々な本を読み勉強して分かったのですが、これは「脳にそういう仕組み」があるからです。
この仕組みを理解するには、次の4つのキーワードを分かっている必要があります
「デフォルトモードネットワーク」
「セントラルエグゼクティブネットワーク」
「セイリエンスネットワーク」
「ネガティビティバイアス」
それぞれ説明していきますね。
ぼんやりとしている時に、活性化する神経回路。
学校や会社へいつも通っている道なら、半ば無意識でも何ともなく歩行できませんか?
慣れていることなら半ば無意識で出来るのは、デフォルトモードネットワークが活性化して対処してくれているからです。こういった機能ですので、車のアイドリング状態に例えられます。
なお、デフォルトモードネットワークが活性化している時は、次に紹介するセントラルエグゼクティブネットワークの働きが低下しています。
自発的に意識を向けたときに、活性化する神経回路。
慣れていないことや誰かと話すなどは半ば無意識ではできませんから、ちゃんと意識的に注意を向けて対処する必要があります。
ちなみに、セントラルエグゼクティブネットワークが活性化している時は、デフォルトモードネットワークの活動が低下します。
デフォルトモードネットワークとセントラルエグゼクティブネットワークの切り替えを、担当している神経回路です。
例えば学校や会社まで通いなれた道をぼんやり歩いている時は、デフォルトモードネットワークが働きますね。
しかし、車が来たなど危険があればセイリエンスネットワークが警告を出して、セントラルエグゼクティブネットワークを活性化するように促してくれます。
脳はネガティブな記憶ほど注目しやすく、さらに長く記憶するように出来ています。これを、心理学でネガティビティバイアスと言います。
なぜそうなのかは、人間が原始生活をしていた頃の名残だそうです。
今のように社会を持たなかった時は、災害や野生動物、同じ人間でも襲ってくるかもしれないなど数々の危険がありました。
こういう状況ではネガティブなことに注意を向きやすくすると、危険にすぐに気づいて対処でき長く覚えておくことで将来も危険を避けやすくなります。
ですから、生存のためにネガティビティバイアスという機能が出来たのです。
嫌な記憶ばかり何度も思い出してしまうのは、どちらかと言うとぼんやりとしている時が多いのではないでしょうか?
私も経験がありますが、特に寝る前に思い出してしまって寝られなくなる……なんてこともよくありました。
ぼんやりしている時に働くデフォルトモードネットワークは、情報を処理するために過去の記憶を思い出したり未来を想像したりします。
ところが、人間にはネガティビティバイアスがあるので、ネガティブなことほど注意が向きやすく長く覚えているので次々と浮かんで来てしまいます。
つまり、嫌な記憶ばかり何度も思い出してしまうのは、デフォルトモードネットワーク+ネガティビティバイアスという仕組みによるものです。
嫌な記憶に対処する方法は2つある
嫌な記憶ばかり何度も思い出してしまう仕組みは、デフォルトモードネットワークとネガティビティバイアスによるものでした。
じゃあ、どう対処すればいいのでしょうか?その方法は、次の2つとなります。
- セントラルエグゼクティブネットワークを活性化して、デフォルトモードネットワークの働きを弱める
- 何もしなければネガティビティバイアスで嫌な記憶ばかり思い出すので、意識的に楽しい記憶を思い出すように誘導する
一番簡単な対処法は、セントラルエグゼクティブネットワークを活性化することでデフォルトモードネットワークの働きを低下させる方法です。
これは簡単にできて、例えば「意識的に呼吸をする」とか「意識的に手を動かす」などをすればいいだけです。それだけで意識的に注意を向けたことになるので、セントラルエグゼクティブネットワークが活性化してくれます。
ところで、この何か思い出したり考えたりしたら意識的に呼吸をするというのは、実は心理療法として行われている「マインドフルネス」と同じ行動です。
今回は深くは触れませんが、もしマインドフルネスにご興味があるなら以下のブログ記事に詳しく書いてありますのでご覧ください。
なお、嫌な記憶ばかり何度も思い出したことで、非常にイライラするケースもあります。この場合は、以下のブログ記事の内容が参考になるでしょう。
続いて嫌な記憶ばかり思い出すのは、ネガティビティバイアスによるものでした。何もしなければ嫌な事ばかり注意が向いてしまうなら、逆に意識的に楽しいことを考えるように誘導すればいいんです。
管理人が実際に行った方法は「ペットの猫を考える」でした。
寝る前は特にデフォルトモードネットワークが活性化しやすいので、その時に猫と遊んだ時や猫がご飯を食べている時などのシーンを意識的に考えるようにしました。
そうすると、それが情報の指向性を与えたのか、嫌な記憶ではなくペットとのふれあいの記憶ばかり思い出すようになりました。
管理人は動物好きなのでペットのことを考えましたが、好きな事なら映画・ドラマ・漫画・ゲーム・趣味などなんでもOKです。
デフォルトモードネットワークが活性化しそうになったら、しばらく意識的に好きなことを思い浮かべて考えるようにしてください。そうすれば、思い出したり考えたりすることは好きことに関するものばかりになります。
デフォルトモードネットワークとはどういうものなのか?
ここで嫌な事ばかり何度も思い出すの原因の一つである、デフォルトモードネットワークについて詳しく解説しますね。
- 前頭前野の内側部→自分について考えるなどに関わる
- 後帯状皮質→行動モニタリング・行動調整・社会的認知に関わる
- 海馬→記憶や空間学習能力に関わっている
- 側頭頭頂接合部→自他の区別などに関わる
- 楔前部→感覚情報をもとにした自身の体のマップがある
- 角回→言語や認知などの処理に関わる
- 脳梁膨大後皮質→エピソード記憶に関係している
- 下頭頂小葉→物体の識別や空間認知に関わる
ぼんやりとしている時は上で紹介した脳の部位が同期し、デフォルトモードネットワークとして活動しています。
- 自分自身の行動や心などをかえりみて調整する
- 過去の記憶を思い出す
- 未来を想像する
- 空想する
嫌な記憶ばかり思い出すの原因の一つということで、デフォルトモードネットワークを敵視してしまう人もいるかもしれません。
しかし、デフォルトモードネットワークは入力された情報の取捨選択に関わっている機能で、生きるために無くてはならない機能です。
色々と調べたり考えたりしてもどうしても浮かばなかったアイデアが、休憩中にぼんやりとしていたら浮かんだという話を聞いたことはありませんか?
実はこのアイデアを閃くという行動は、デフォルトモードネットワークのおかげです。
ですから、敵視せずにネガティビティバイアスという機能のせいだと理解して上手に利用しましょう。
なお、デフォルトモードネットワークが過剰に活性化することで、うつ病の原因になってしまうことが知られています。
実はデフォルトモードネットワークは、脳が消費する全エネルギーのうち60~80%も使用しています。なので、過剰に活性化してしまうと、どんどんエネルギーを使用して脳疲労の状態に……。
うつ病の人は横になっているだけなのに異様に疲れているので、なぜなのか不思議に思ったことはありませんか?
それは、デフォルトモードネットワークがエネルギーを使い果たしてしまったために起きたことです。
ですから、意識的に注意を向けることでセントラルエグゼクティブネットワークを活性化させて、デフォルトモードネットワークを適度になるように調整しましょう。
今の状況は自分を成長させるための試練だと思おう
人によってはトラウマと言えるような、つらい記憶ばかりでかなり苦しいかもしれません。
そういう時は、次の4つの心構えを持って行動すれば段々落ち着いて冷静に行動できるようになってきますよ。
- 今の状況は自分を成長させるための試練だと考える
- 他人と比較しない。自分は自分と考える
- 最初がダメだったからといって全部ダメと考えない
- 意識的に「出来たこと」「楽しいこと」に注目しよう
生きていれば本当に、何でこんなことが起きるの!?という事も容赦なく起こります。つらいことですが、無かったことにしたり避けたりすると余計に苦しむだけです。
ですから、まずはそういうことが起きたと受け入れてから、どうするべきか考えて対処しましょう。
受け入れやすくするためのコツは、「つらい事が起きた」ではなく「自分を成長させる試練が起きた」と考えること。こう考えるだけでつらさが変わりますし、実際にそうやって起きたことを乗り越えていくことで人間は成長できます。
ただし、絶対にあなた一人で乗り越えないといけない訳ではなく、周りの人に協力してもらってもOKな点を忘れないでください。
もちろん、乗り越えること自体は本人がやらなければ意味ありませんが、乗り越えるためのお膳立てを他人に協力してもらうのは全然構いません。
例えばトラウマとなっているなら、精神科医やカウンセラーといった専門家の力を借りましょう。どうすれば乗り越えられるかアドバイスを受け、その通りに行動してください。
続いて、他人と比べないことが重要となります。なぜなら、他人と比べることでつらさが何倍にも上がってしまうからです。
数か月前にYahoo!ニュースで拝見したのですが、「親ガチャ」なるものがSNSで話題になっているそうです。これは、自分の親が当たりか外れかという考え。確かに、ニュースを見れば我が子に本当にひどすぎることをして逮捕される親がいるので分からなくもないです。
でも、親ガチャも結局は他人と比べているだけですから、余計に苦しむだけでマイナスでしかありません。なぜなら、比べて相手の方が良かったとしても、入れ替わるとか無理ですしどうにもならないからです。
比べても良いのは例えば商品の値段、AとBのお店でどちらが安いか?とかで、人生や周りの環境などは比べないでください。
私は、こんなつらいことを経験したからもうダメだという人がいます。確かにつらいしよく分かるのですが、はたして本当にダメでしょうか?
昔は脳は一定の年齢から成長しないと言われていましたが、現在では何歳でも成長できることが分かっています。脳を成長させることで、つらい出来事も成長の糧となりますよね。
ですから、つらい出来事があったからもうダメだと言わないで、それを乗り越えることで成長できたとしましょう。
最後に、脳にはネガティビティバイアスがありますので放っておけば嫌なことや出来なかったことばかり注目してしまいます。
そういう嫌な事ばかり考えるとやる気も削がれ、新しいことに挑戦せず何もやらなくなるでしょう。
しかし、意識的に「楽しかったこと」「出来たこと」を考えるようにすれば、これらを避けることができます。そういう習慣を持つことで、つらくて仕方なかった日々も楽しくなっていきますよ!
まとめ
管理人もやめたいのに嫌な記憶ばかり何度も思い出してしまい、本当に苦しみました。
しかし、本文で書いたように、意識的に呼吸をしたり手を動かしたりするだけで止めることができます。これは本当に簡単なので、ぜひ試してください。
なお、日々できるだけセントラルエグゼクティブネットワークを活性化して過ごすことが、嫌な記憶ばかり思い出してしまうのを防ぐことに繋がります。
ですから、慣れていることでも無意識に行わないで、できるだけ意識的に行うようにしてください。
そうやっていけば嫌な記憶も思い出となってもう気にならなくなるので、平穏で楽しい日々を手に入れましょう!
参考文献
最後に今回の記事を書くにあたって、参考にした本をご紹介します。どの本も役立ちましたので、ぜひ読んでみてくださいね。