この記事を書いている私もそうですが、聴覚障害になるとコミュニケーションに本当に苦労しますよね。
今回はその中でも、病院で医者といった医療従事者とのコミュニケーションを取り上げたいと思います。
医療従事者とのコミュニケーションは特に重要で、症状がはっきりと伝わらなかったことから誤診に繋がったり、苦手なことから避けてしまい病気の治療が遅れたりと命に直結する事態になりかねません。
特に現在(2021年9月)では、新型コロナウイルスが広がっています。もし感染してしまったら、医療従事者とコミュニケーションできないと大変です。
そうは言っても聞こえないんだから仕方ないじゃないか!と言われそうですが、ちゃんと症状をしっかりと伝えて楽にコミュニケーションできる手段はあるので安心してくださいね。
状況別の医者とのコミュニケーション方法
ここでは、その人の状況ごとに適したコミュニケーション手段をご紹介します。状況ごとと書いたのは、人によってどのくらい聞こえるか?喋ることはできるか?など違いがあるからです。
もしコミュニケーションの問題で病院へ行くことを避けていたなら、ぜひ下のコミュニケーション方法の中から自分に合った手段を使用してみてくださいね!
まず自宅で困っている症状を詳しく書き出しておこう
症状を書き出しておくのは、どのような状況の人でも病院に行く前にやっておいてください。書き出すのはスマホでメモ帳のようなアプリを使ってもいいですし、紙に書く・パソコンで入力して印刷などでも構いません。
あらかじめ自宅で症状を書いておくことで、医者に伝え忘れてしまうといったミスを防げます。特にコミュニケーションで困っている方は対話に慣れていないので、いざ診察になると緊張してうっかりど忘れ…というミスが多いです。
なお、診察の前に受付で看護師の方と、どのような症状で来院したのかなど話すと思います。初めて行く病院なら、「私は聴覚障害者です」と書いておきどのくらい聞こえるのかも記しておきましょう。
障害者手帳を出せば、聴覚障害者だと分かるのでは?と思うかもしれません。でも、障害者手帳は例えば感音性難聴といった病気の種類と何級かと病気の重さだけで、どのくらい聞こえているのかは細かく分かりません。
例えば私は補聴器を付けても感音性難聴がひどく、人の声が聞こえても何と言っているのか判別できず会話が困難です。これをただ「聴覚障害者です」とだけ言えば、補聴器を付けているのだから聞こえるはずと思われるかもしれません。
だから、医者は聞こえると思って話しかけてくるけど聞き取れない…とコミュニケーションがうまくいかなくなります。
このような誤解を防ぎスムーズに診察を受けるためにも、まず自宅で耳の状態と困っている症状を書き出してくださいね。
手話ができるなら手話通訳者に同行してもらう
手話が使える人向けの、医療従事者とのコミュニケーション方法です。
手話通訳者派遣センターに連絡して派遣してもらい、手話通訳者と一緒に行き言葉を通訳してもらう方法。この方法が何か急な事態があっても対応しやすく、一番柔軟なコミュニケーションが取れるでしょう。
ただし、現在(2021年9月)では、少々問題が起きています。それは新型コロナウイルスに感染する可能性があるため、手話通訳者の同行が難しくなっていること。
じゃあ無理じゃないかと言われそうですが、同行ではなくスマホを用いた遠隔での手話通訳が始まっているので安心してくださいね。
この遠隔手話通訳は、テレビ電話を利用して医療従事者の言葉を離れた位置にいても通訳できるようにしたものです。
もし遠隔手話通訳を使うなら、あらかじめ紙などに「私は耳が聞こえません。スマホのテレビ電話を利用した遠隔での手話通訳サービスを利用したいのですがよろしいでしょうか?」と書いておき見せると良いでしょう。
なお、スマホからの電波により医療機器に誤作動が起きる可能性があるため、スマホ禁止にしている病院もあるようです。
そういう病院の場合は、使用できるかどうか聞いてみてダメだったら下で取り上げている別の方法を利用してみてください。ちなみに、スマホOKの病院でも、使用したまま医療機器に近づくのはマナー的にやめましょう。
中途失聴者で喋れるなら音声入力を利用するとスムーズ
こちらは中途失聴者で、耳は聞こえないけど話すことができる人が対象です。
手書きでは時間が掛かりすぎる上に医療従事者にも負担になってしまうので、音声を文字に変換して表示てくれるデバイスを利用してコミュニケーションを取ります。
使用するデバイスは、音声入力アプリを入れたスマホ・タブレットかポケトークmimi・タブレットmimiという専用機器を使います。
音声入力アプリのおすすめは、「UDトーク」と「こえとら」。どちらも無料で使えて性能も高く、実際に教育機関などで聴覚障害者のサポートに使われているアプリです。
特にUDトークは開始ボタンを押せば、あとは周囲の声を拾ってどんどん文字に変換してくれるのでぜひ一度使ってみてください。
なお、聴覚障害者をサポートしてくれるアプリは、下のリンクからいける別記事にまとめてあります。
町草ブログ「聴覚障害のコミュニケーション困難さをサポートできるアプリまとめ」記事へ移動
そもそもスマホやタブレットを持ってなかったり個人情報が入っているので他人に見せたくなかったりするなら、専用機器のポケトークmimiやタブレットmimiを使いましょう。
ポケトークmimiやタブレットmimiは、ソースネクスト社が販売している聴覚障害者のサポートを目的とした音声を文字に変換して表示してくれるデバイスです。
※上のリンクよりソースネクスト社のポケトークmimi公式ページに移動することができます。
できることは、音声を拾って人工知能が文字に変換することだけ。インターネットに繋がっていますが、サイトを見たりゲームをしたりはできないので個人情報はなく安心して使用できますよ。
なお、ポケトークmimiとタブレットmimiの2種類がありますが、違いは以下のようになっています。
ポケトークmimi | 持ち運びを想定した作り。ボタンを押した間だけ音声を文字に変換できる |
タブレットmimi | 据え置きを想定した作り。電源を入れたら後はどんどん音声を文字に変換していく |
病院なら持ち運ぶということで、ポケトークmimiが適していると思います。ただ、ポケトークmimiはいちいちボタンを押す必要があるため、その点が煩わしいならタブレットmimiを使うのも良いでしょう。
電源はスマホと同じなためコンセントを借りる必要はありませんし、先生にお願いして机の上に置いてもらえばタブレットmimiでも問題なく使用できます。
どちらが良いのかについては、下のリンクからいけるこのブログの過去記事で比較しているので参考にしてください。
町草ブログ「【比較レビュー】ポケトークmimiとタブレットmimiならどちらが良い?」記事へ移動
欠点としては価格がそれなりに高く、ポケトークmimi・タブレットmimiどちらも3万円台となっています。
しかし、使用してみた感想として、スマホとは違いアプリ立ち上げの手間がなく電源を入れるだけですぐ使用できる手軽さでストレスフリー。それに変換の精度が高いので、家族との雑談が楽しくなると3万円も払うメリットは十分ありました。
滑舌が悪く話しても伝わりにくいなら筆談器を使おう
ところで、中途失聴者といっても自身の声が聞こえないことから、どうしても滑舌が悪くなって伝わらないことがありますね。
そういう時は、仕方ないので筆談器も用意して筆談で伝えてください。どのような筆談器が良いのかは、このブログの過去記事で紹介しているのでリンクを下に載せておきますね。
町草ブログ「聴覚障害者が教える筆談器のおすすめ10選!」記事へ移動
上のリンクからいける記事で、いろいろな筆談器をご紹介しています。その中でも、一番は磁気を使ったタイプでしょう。書いたらすぐ消せるので手間がありませんし、マジックのように手が汚れることもありません。
手で文字を書くのが苦手という場合は、スマホやタブレットで文字を入力して筆談する方法があります。コツとして素早く入力できるように、ある程度は練習しておくと良いでしょう。
なお、スマホやタブレットで使用できるかなり小さいキーボードが販売されているので、入力が厳しいなら使用してみてください。
生まれつきの難聴で言葉を話すことが難しいなら複合で行こう!
聴覚障害者には生まれつき難聴で音声言語が獲得できず、話すことが難しい方もいらっしゃいます。
発音が難しいなら、上記で挙げた複数の方法を組み合わせてコミュニケーションを取りましょう。
例えばタブレットmimiを机の上に置かせてもらい、自身は筆談器を持っておく。タブレットmimiを見て医者の話を聞きながら、返事は筆談器で筆談で済ませるといった感じですね。
医者とのコミュニケーションで重要なことは、症状をしっかり伝えること+医者の指示を聞くことですのでその点がクリアできていればOKです。
まとめ
聴覚障害者が病院で、医者といった医療従事者とコミュニケーションする方法をご紹介しました。
医者とのコミュニケーションが不安で、病院を避けてしまう方もいらっしゃるかもしれません。しかし、上記でご紹介したように現在では聴覚障害者をサポートする道具が色々とあるので、そこまで心配する必要はありませんよ。
病気や怪我などでいつ病院のお世話になるか分からないので、ご紹介したコミュニケーション方法から自分に合うものを選び準備しておいてくださいね!