この記事を書いている人は、両耳とも聞こえない聴覚障害者です。
今回は、①聴覚障害者が使って役立つアプリ②健聴者が聴覚障害者とコミュニケーションしたい時に役立つアプリをご紹介します。
基本的に無料で使えるアプリから選んでいるので、どんどん使ってコミュニケーションに活かしていきましょう!
ちなみに、一部アプリは別記事でより詳細な解説と使い方を紹介しているため、気になったらそちらもご覧ください。
聴覚障害者向けのアプリってどんな機能があるの?
代表的な機能は以下の、音声入力・読み上げ・手書き・定型文・電話サポートの5つになります。
聴覚障害者に役立つのはもちろんですが、いくつかの機能は健聴者が耳が聞こえない人とコミュニケーションする際にも活躍します。
ぜひ健聴者も、聴覚障害者とコミュニケーションする際に活用してみてください!
音声認識を使って相手の声を文字で表示できる「音声入力」
音声認識プログラムを使い、話すだけで声を文字として出力できる機能です。
聴覚障害者とのコミュニケーションは、どうしても音に頼らない筆談が基本になります。しかし、こちら(聴覚障害者)がスマホ入力に慣れていても、相手(健聴者)が慣れてなく少々大変な時がありますね。
音声入力があれば相手が操作に不慣れな時も、このスマホ・タブレットに向けて喋ってくださいと伝えるだけで済みますよ。
また、字幕がないため内容がよく分からない動画も、アプリによってはスピーカーにスマホ・タブレットに向けるだけでどんどん文字にしてくれるので分かるようになります。
ちなみに、音声入力を使うなら、健聴者にも理解して欲しいのですが聴覚障害者は自分の声が聞こえないのでどうしても滑舌が悪くなります。
管理人も聞こえないので滑舌が悪く、音声認識の精度は微妙です。そういう事情があるので、無理そうなら健聴者側=音声入力・聴覚障害者側=キーボード入力のように柔軟な対応をお願いします。
「読み上げ」があれば耳は聞こえるけど筆談が無理な相手でも大丈夫!
入力された文字を、合成音声で読み上げてくれる機能です。
こう言うと「そもそも聴覚障害者は耳が聞こえないのだから、読み上げ機能は必要なの?」と思われるかもしれません。
人とコミュニケーションをする上で、読み上げ機能は必要です。
かなりはやい段階か生まれつき失聴したため音声言語の獲得ができず、言葉を話せない方がいます。
しかし、読み上げ機能があれば、入力するだけで話せるようになります。
例えばお礼を言いたい時にただお辞儀をするだけではなく、合成音声で良いから「ありがとうございました」とスマホから読み上げつつお辞儀をした方がより感謝の気持ちが伝わりますよね。
このように読み上げ機能を使うことで、コミュニケーションをより密にすることができますよ!
それから、世の中には耳は聞こえるけど病気で手が不自由なため、筆談ができない方がいます。
管理人はかなり昔にそのような手が不自由な方と会ったことがありますが、何と言っているのか聞き取れずかといって筆談も無理な状況で結局話せませんでした。
でも読み上げ機能があれば、筆談ができずコミュニケーションが普通は無理な人とも話せるようになります。
ちなみに、健聴者でも風邪などで喉が痛くて話しにくいときに読み上げ機能を使って会話する使い方ができるため、結構役に立つ機能です。
絵や図で伝えた方が良いなら「手書き」が役立つ
手書きは、Windowsに搭載されているペイントのような画面に指で文字を書けるアプリです。
道を尋ねられた時に簡単な地図を書くなど、文字ではなく絵や図で伝えたい時に手書きがぴったり。また、スマホ・タブレットに不慣れで、キーボード入力だと時間が掛かってしまう時も向いていますね。
必要な説明を素早く表示できる「定型文」
初めて会う人と筆談する時は、「私は耳が聞こえないので、筆談でお願いできますか?」と説明するのが普通です。
しかし、何度も同じことを書くのは大変ですね。
定型文は「私は耳が聞こえません」など説明があらかじめ登録してあって、押すだけで表示できる機能。
障害について素早く説明できるので、話したいことに集中できるようになりますよ。
意外と定型文が搭載されていないアプリも多いため、スマホ・タブレットで筆談していくなら付いているものを選びましょう。
必ず入れておきたい緊急時に役立つ「電話サポート」
最後の機能は、緊急時に役立つ電話サポートです。電話サポート機能は、大きく分けて2つあります。
①緊急時の連絡先や何を伝えてほしいのかあらかじめ書いて、周りの健聴者に見せて代理で電話してもらうもの
②声を使わずに筆談で、警察などの機関に連絡できるもの。ただし、最初に電話番号や住所、耳が聞こえないといった病気などを登録しておく必要がある
基本的に聴覚障害者向けで、もしものためにどちらもお持ちのスマホに入れておくと良いでしょう。
聴覚障害者が使って役立つアプリ
最初にご紹介するアプリは、聴覚障害者が使って役立つアプリです。色々な状況に対応できるので、スマホ・タブレットに入れておきましょう。
迷ったらこれを入れておこう「こえとら」
- 機能:読み上げ・音声入力・手書き・定型文・地図・チャット
- アプリの一言説明:読み上げ・音声入力・手書きなどコミュニケーションに必要なことが一つのアプリで行える
- 対応デバイス: iOSバージョン10.3以上・Androidバージョン5.0以上
- 価格:無料
どれをインストールすれば良いのか迷ったら、こえとらは必ず入れておきましょう。
読み上げ・音声入力・手書き・キーボード入力と、色々なことが一つのアプリで行える聴覚障害者コミュニケーション支援ソフトです。
定型文が豊富にあり、いちいち入力しなくても「私は耳が聞こえないので、筆談でお願いします」などを素早く表示できるので、実際のコミュニケーションでも役立っています。
管理人そうですが聴覚障害者は滑舌が悪いので音声入力は少々難しいものの、相手の健聴者の声を文字にしてくれるので話の理解に役立ちます。
ちなみに出来ることに地図とありますが、これは現在位置を地図で表示+タップして目的地に印を付ける機能です。
※こえとらは、以下の記事でより詳しく紹介しています。
【聴覚障害者におすすめアプリ】入力文字を読み上げてくれる「こえとら」レビュー
音声をどんどん文字にしてくれる「UDトーク」
- 機能:読み上げ・音声入力・外国語の翻訳・チャット
- アプリの一言説明:音声入力ONで声をどんどん文字できる
- 対応デバイス:iOSは最新バージョン・Androidはバージョン4.2.0以上
- 価格:個人の目的で使う時だけ無料(制限あり)・業務で使う時は有料
大学やろう学校といった教育機関や企業で、聴覚障害者を支援するアプリとして導入されているのがUDトークです。
音声入力をONにすると、どんどん相手の声を文字にしてくれます。使ってみて良かったのが一度ONにすれば手動でOFFにするまで音声入力が続き、一文ごとに区切って文字にしてくれる点です。(ただし、無料版は30分までの制限あり)
YouTubeなどで字幕が無く内容がよく分からない動画があっても、スピーカーにマイクを向けて音声入力ONにするだけで字幕をリアルタイムに作成できますよ!
翻訳機能は例えば、話すのは日本で読み上げは英語といったことができます。さらに、英語だけでなく、ギリシャ語やスペイン語、タイ語など非常に多数あります。
これほど、多数の言語をサポートしているなら普通に翻訳ソフトとしても使えますね。
※UDトークは、以下の記事でより詳しく紹介しています。
【聴覚障害者におすすめアプリ】字幕なし動画も分かるようになるUDトークレビュー
ショートカットですぐ起動できる「音声文字変換」
- 機能:音声入力
- アプリの一言説明:ショートカットで素早く起動して音声入力できる
- 対応デバイス:Androidのみ
- 価格:無料
Androidのスマホ・タブレットを使っている方は、筆談が素早くできるようになるのでぜひ入れておくのをおすすめします。
Googleとアメリカのギャローデット大学と共同で開発された、聴覚障害者をサポートするためのアプリです。ちなみに、ギャローデット大学は聴覚障害者のための大学になります。
インストール後にスマホ・タブレットの設定を開き、システムのユーザー補助から音声文字変換をONにします。
ONするとAndroidoタブレットの画面右上にアイコンがずっと出るようになり、アイコンをタップするとすぐに音声入力する画面に入れるようになります。
頻繁に使うなら、すぐに音声入力に入れるので便利ですよ。なお、アイコンを消したい場合は、設定からOFFにしましょう。
友人と手書きでコミュニケーションできる「手書き電話UD」
- 機能:手書き・音声入力・チャット
- アプリの一言説明:友人と筆談を通して連絡を取れる
- 対応デバイス:iPhone、iPad、iPod touchのiOSバージョン6.0以上・Androidバージョン4.0以上
- 価格:無料
手書き入力を通して、友人と筆談できるアプリです。
デフォルト入力は手書きとなっていますが、キーボードや音声入力も可能。
何か文字を書くと相手の画面にも少しずつ書いた文字が現れるので、向かい合って筆談しているような感覚になります。
グループを作成して、複数の人と筆談することもできますよ。
あまり長い内容を伝えるのは大変なので業務連絡には向きませんが、友人とのコミュニケーションに向いたアプリです。
※手書き電話UDは、以下の記事でより詳しく紹介しています。
どうして欲しいのか伝える画面を作成できる「電話お願い手帳」
- 機能:電話サポート
- アプリの一言説明:健聴者に電話で伝えて欲しいことを画面に表示できる
- 対応デバイス:iOSバージョン8.0以上・Androidバージョン8.0以上・Web版もあり
- 価格:無料
画像にあるように、伝えて欲しいことを選んでいくことで何に困っていてどうして欲しいのか画面に表示することができます。
その画面を健聴者に見せて、代わりに連絡してもらう形になります。
実際にやってみると緊急事態の時はパニックになりやすいですが、項目を選んでいくうちに冷静になれる効果もありました。
例えば怪我人はいるのか?誰が怪我したのか?といった項目もあるため、実際に電話を掛ける方も伝えやすくなっています。
ちなみに、アプリ自体が電話を掛けてくれるわけではないのでご注意ください。
筆談で警察に通報できる「110番アプリ」
- 機能:電話サポート
- アプリの一言説明:警察への通報を声を使わずに行うことができる
- 対応デバイス:iOSバージョン9.0以上・Androidバージョン4.4以上・ガラケー版もあり
- 価格:無料
電話が使えないと、普通は緊急時の警察への通報ができません。しかし、110番アプリを使えば、耳が聞こえなくても筆談で通報できるようになります。
全国どこから通報しても、最寄りの警察署に繋がるので安心。
スマホだけでなく、ガラケーにも対応。使うためには、あらかじめ住所や電話番号などを登録しておく必要があります。
登録の際に備考欄があるので、耳が聞こえない・滑舌が悪くて話せないなどを書いておくと警察の方が対応しやすくなるため忘れずに書いておきましょう。
ちなみに、警視庁からはもう一つ「警視庁110番サイト通報アプリ」がリリースされています。
違いは110番アプリは全国どこでも使えるのに対し、警視庁110番サイト通報アプリは東京都内のみです。また、警視庁110番サイト通報アプリは、後々110番アプリに統合されると発表がありました。
最後に、あくまで聴覚障害者向けのアプリのため、健聴者は普通に電話で110番してくださいとのことです。
※110番アプリは、以下の記事でより詳しく紹介しています。
聴覚障害者とのコミュニケーションに役立つアプリ
続いては、健聴者が聴覚障害者とコミュニケーションを円滑にするため役立つアプリをご紹介します。
アプリがあるだけでコミュニケーションの質が格段にあがるので、ぜひ使ってみてくださいね!
聴覚障害者とコミュニケーションを取るならまず「SpeechCanvas」
- 機能:手書き・音声入力
- アプリの一言説明:健聴者は音声入力、聴覚障害者は手書きでコミュニケーションが取れる
- 対応デバイス:iOSバージョン10.3以上・Androidバージョン5.0以上
- 価格:無料
聴覚障害者とコミュニケーションを取りたい時は、まず「SpeechCanvas(スピーチキャンバス)」を使うと良いでしょう。
画面が2つに分かれており、それぞれ音声入力と手書きで文字を書くことができます。健聴者は音声入力を使い、聴覚障害者は手書きを使うという感じですね。
音声入力できるアプリは多数ありますが、ほとんどのアプリは音声入力中に他の入力方法を使うことができません。
しかし、SpeechCanvasを使えば健聴者が話して文字にしたそばから、それに対する返事を聴覚障害者がすぐ書けるのでスピーディーなコミュニケーションが可能になります。
※SpeechCanvasは、以下の記事でより詳しく紹介しています。
聴覚障害者と音声入力で話すならSpeechCanvasアプリがおすすめです
スマホ・タブレットを動かさずに筆談できる「筆談パット」
- 機能:手書き
- アプリの一言説明:自分と相手の2画面で、手書き筆談が出来る
- 対応デバイス:iOSバージョン8.2以上・Androidは無し
- 価格:無料
手書きのみで、筆談ができるアプリ。一番の大きな特徴は、画像のように自分と相手の2画面で筆談ができることでしょう。
なぜ2画面が良いの?
2画面にすることで、いちいちスマホ・タブレットを受け渡しする必要がなく、机の上に置いたままできるようになるからです。
自分の方の画面で何か文字を書くと、相手の画面に反転した状態で表示されます。また、自分と相手で文字の色が変わるため、どちらが書いたのか第三者もすぐに分かります。
ちなみに、設定で2画面をやめて1画面にすることも可能ですよ。
※筆談パットは、以下の記事でより詳しく紹介しています。
【スマホで筆談ができる!】文字を反転させて相手に表示できる筆談パットレビュー
シンプルで容量もあまり使わない「筆談ボード」
- 機能:手書き
- アプリの一言説明:シンプルで容量もあまり使わない手書き筆談アプリ
- 対応デバイス:iOSバージョン11.0以上・Androidは無し(別作者の同名のアプリがある)
- 価格:無料
機能は、手書き・消しゴム・全部消すの3つだけとシンプルな筆談アプリです。ちょっとしたことや、絵・図で伝えた方が良い場合にぴったり。容量をわずか7.4MB(iPadの場合)しか使わないので、他のアプリと一緒にインストールしサブとしての用途におすすめします。
※筆談ボードは、以下の記事でより詳しく紹介しています。
【聴覚障害者におすすめアプリ】筆談アプリの中でもシンプルで使いやすい「筆談ボード」
シンプルで使いやすい音声認識アプリ「KIKUBANA」
- 機能:読み上げ・音声入力
- アプリの一言説明:読み上げと音声入力ができるシンプルなアプリ
- 対応デバイス:iOSバージョン12.0以上・Androidは無し
- 価格:無料
音声入力が出来るので、聴覚障害者とコミュニケーションしたい時にぴったりなアプリです。
他の音声入力アプリと比べてシンプルな見た目のため、どなたでも使いやすい仕上がり。
設定では文字のサイズを変えるといったことができ、大きくすることで視力が悪く見えにくい人にも好評でした。
ちなみに、滑舌が悪い管理人が音声入力をご紹介したものも含め色々なアプリで試したところ、なぜかKIKUBANAが一番精度が高い結果になりました。
外国語の翻訳もできる音声認識アプリ「しゃべり描き」
- 機能:手書き・音声入力・翻訳
- アプリの一言説明:手書きや音声入力でコミュニケーションできるだけでなく外国語の翻訳もできる
- 対応デバイス:iOSバージョン11.4以上・Androidは無し
- 価格:無料で使えるが一部課金あり
手書きだけでなく、音声入力やキーボード入力もできるコミュニケーションアプリです。
ただ文字を書くだけでなく写真を張り付けて、さらに色々と書き込んでより詳しく伝えることも。
音声入力はマイクボタンを押して話してから、書きたい場所をなぞると文字が現れる面白い仕様です。
外国語の翻訳機能も搭載。普段は翻訳アプリとして使い、聴覚障害者と話すときは筆談アプリとして使えますよ。
なお、無料版だと画像の挿入と翻訳は、月に10回までの制限があります。
一定期間だけ無料で後々有料になるアプリに気を付けよう
一定期間だけ無料で使えるアプリを、サブスクリプションアプリ(サブスクアプリ)と言います。サブスクリプションとは、定額課金のこと。
一部の音声入力アプリでインストールは無料で行えますが、一定期間経つと有料になり後から料金を請求されるケースがあります。
もちろん、しばらくしたら有料になることは説明文に書かれています。ただ、説明文が長過ぎて、見逃してしまうケースも多いんですよね…。
そのため、アプリをダウンロードする際は、無料なのかよく確認してからしましょう。
今回ご紹介したアプリは、サブスクアプリは除外しています。
スマホだけじゃなくてタブレットを持っておくととても便利!
聴覚障害者に役立つおすすめのアプリを、ご紹介しました。最後に、より便利に使うためのコツをご紹介します。
より便利にアプリを使うなら、スマホだけでなくタブレットも持っておくことです。
なぜなら、スマホはどうしても画面が小さいので、筆談がやりにくい点があるから。
特に2画面で行うアプリの「筆談パット」は、スマホではディスプレイのサイズが小さ過ぎて厳しいものがありました。
実際に視力が悪い人と筆談した時に、文字が小さく見えにくいのことであまり続かなかった経験があります。
なお、タブレットのおすすめは、管理人もメインで使用しているiPadです。10.2インチとかなり大きいので文字も書きやすく、筆談パットの2画面での筆談も問題なくできました。
32GBモデルなら3万円台と比較的に安く、同価格帯のAndroidタブレットと比べるとかなり性能高いのでゲームなども快適にできますよ。
どうしてもAndroidタブレットが良いなら、HUAWEI(ファーウェイ)が販売しているHUAWEI MediaPad T5 10ですね。人気あるエントリーモデルで10.1インチとかなり大きく性能もそこそこ、Amazonで2万円を切る価格で販売されています。
まとめ
管理人も耳が聞こえないので、今までコミュニケーションに強い不安を抱えていました。
しかし、ご紹介した聴覚障害をサポートする便利なアプリを使うことで、近年では不安に思うことが減りました。
滑舌が悪いことから音声入力は無理ですが、それでも相手にスマホ・タブレットに向けて話してもらうだけで何と言っているのかすぐ分かります。
せっかく便利なアプリがたくさん出てきているのですから、利用しないと損ですね。
聴覚障害者は孤立しがちなので、どんどんアプリを利用して人と関わっていきましょう!